今回は以前取材に来て下さった方とのインタビュー取材の内容を公開したいと思います。
取材担当・編集者 : 小口シュウイチ
【廣瀬貴大氏プロフィール】
岐阜県立衛生看護専門学校を卒業後、看護師としてのキャリアをスタートさせた廣瀬貴大氏は、現場で培った経験と知識を基盤に、医療と介護の分野で15年以上に渡って活躍してきました。その情熱と使命感から、2020年に株式会社like ONE selfを設立し、代表取締役に就任。
同社では、訪問看護ステーションひまわりや訪問介護ステーション楓など、複数の事業所を運営。看護師、理学療法士、介護福祉士など、各分野の専門スタッフを揃え、高齢者や小児、精神疾患を抱える方々など、幅広い利用者のニーズに応えています。質の高いサービスを提供し、地域社会に貢献することで、訪問看護ステーションひまわりでは99名もの利用者に支援を行うなど、目覚ましい実績を上げています。
医療と介護の現場で培った知見を活かし、社会におけるケアのあり方を探求し続け、誰もが尊厳を持って生活できる社会の実現に向けて、日々邁進しています。
編集者:本日は、株式会社like ONE selfの代表取締役社長である廣瀬さんに、会社経営における失敗談や教訓について伺います。廣瀬さん、よろしくお願いします。
廣瀬:よろしくお願いします。私自身、まだまだ経験不足ですが、率直に思ったことをお話ししたいと思います。
経営判断
編集者:それでは始まりに、経営判断についてお聞きします。過去に経営判断の誤りを感じたことはありますか?
廣瀬:正直、まだよくわかっていないんです。経営判断なのか現場判断なのか、自分の中でハッキリしていないのが実情なんです。情けない話ですが…。でも、今のところ会社として大きなミスをしたとは思っていません。ただ、本当の危機に直面した時に、きちんと対応できるようにシミュレーションしておかないと、っていう不安はありますね。そうですね、あえて言うのであれば、PDCAサイクルの「Check(評価)」の部分ができていないことが、将来の失敗につながるかもしれませんので、気を付けないとですね。
市場調査
編集者:ありがとうございました。続いて市場調査についてお尋ねいたします。 今までに市場調査の不足について課題を感じたことはありますか?
廣瀬:開業時に周辺5市町村の調査をしてもらったんですが、知識と経験がなかったので、うまく活用できませんでした。今度新事業として就労支援施設を作るんですが、その時はどの情報をどう使うかなど、いろんな視点で学びたいと思っています。新事業はフランチャイズ加盟なので、大企業からノウハウや姿勢を学ぶチャンスでもあるんです。
人材
編集者:次に人材について、お聞かせください。今までに人材不足について課題を感じられたことはありますでしょうか。
廣瀬:うちは医療・介護の専門職ばかりなので、経営や縁の下の力持ち的な存在が不足しているんです。私自身もそういう人たちと仕事をしたことがなかったので、人脈もなくて。でも、弱点に蓋をせず、後回しにしないように意識して、スタッフにも伝えるようにしています。
資金繰り
編集者:多くの経営者が悩む資金繰りについて教えてください。
廣瀬:保険事業特有のレセプト待ちの3ヶ月が大変でした。おかげで開業4ヶ月で単月黒字は達成できたんですが、売掛金ばかり膨らんで手元に現金がない。その時はキャッシュフローの意味も重要性もわかっていなくて、不安と焦燥感が強かったですね。今は借金を事業への投資と捉え直して、借りられるだけ借りて人を増やし、サービスの充実に専念しています。
マーケティング戦略
編集者:マーケティング戦略についてはどうでしょう。
廣瀬:この質問はまだ早いかもしれません。新事業を2つ控えているので、1年後には是非が問えるようになるはずです。でも、看護師としても社会人としても、恐ろしく狭い世界で生きてきたという実感が、私にとっての教訓ですね。失敗ではなく、うまくいかない方法を見つけたと謙虚に吸収するようにしています。
競合企業への対応
編集者:競合企業への差別化について意識されていることを教えてください。
廣瀬:今のところ、業界では大企業か零細企業かの二極化が進んでいます。うちは当然零細ですが、負けない部分で競合しないようなサービスを心がけています。将来、若くて勢いのある企業が出てきた時に、対応不足かどうかがハッキリするかもしれません。
リスク管理と失敗の定義
編集者:リスク管理についてはどうでしょう。
廣瀬:セキュリティ、労務、経理、法改正など、うちが未熟な分野ばかりなので、常に石橋を叩いている感じですね。でも、ヒヤリハット事案をきちんと周知して、誰かがハマった落とし穴を分析し、必ず埋めておくことでリスクを減らせると考えています。
編集者:今までに事業の撤退を考えたことはありますか?
廣瀬:今のところ、撤退の選択肢はないんです。背水の陣の一歩手前という感じでしょうか。できれば避けたいですけどね。事業撤退は、本当に最後の手段だと考えています。でも、事業を続けることで、利用者様や従業員に迷惑をかけてしまうようなことがあれば、撤退も選択肢の一つだと思います。そういう状況に陥らないためにも、日頃から事業の状況を冷静に分析し、先を見据えた経営判断を心がけたいですね。もし撤退が必要になった時は、利用者様や従業員の立場に立って、誠意を持って対応することが大切だと考えています。
編集者:廣瀬さんにとって失敗とは何でしょう。そして失敗から何を学べるのでしょうか?
廣瀬:失敗という概念は捨て去るように意識しているんです!エジソンの言葉じゃないですが「うまくいかない方法を見つけた」と捉えるようにしています。
未来の起業家へのアドバイス
編集者:会社経営を目指す人に伝えたいことはありますか?
廣瀬:お金持ちになりたいという理由以外なら、人生一度きりなので、チャレンジすることをおすすめします。でも、ブレないことと柔軟にブレることのバランスが難しいのが現実です。経営者は仕事という概念を捨てて、やりたいこと、興味があることに邁進できれば、きっとうまくいくはずだと信じています。ある意味、中二病の極みかもしれませんけどね(笑)
編集者:今後の展望について教えてください。
廣瀬:今の弊社には失敗はありません。全て学びだと思っています。でも、少し経つと失敗を恐れるようになるかもしれない。そうならないように、初心を忘れず、基本的なことを徹底し、責任を取る時は迷わず行動する。そんな会社を作っていきたいですね。そうすれば、きっと神様は手を差し伸べてくれるはずです。
編集者:本日は貴重なお話をありがとうございました。
廣瀬:こちらこそ、ありがとうございました。まだまだ未熟者ですが、一歩ずつ前に進んでいきたいと思います。