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2024年訪問看護の新設加算一覧と算定ポイント|介護・診療報酬改定まとめ

訪問看護の新設加算一覧

2024年は介護報酬と診療報酬のダブル改定の年となっており、訪問看護においても新設加算や算定要件の変更など、大きな改定が予定されています。本記事では、訪問看護の2024年報酬改定のポイントを新設加算を中心に解説します。

Table of Contents | もくじ

2024年介護報酬改定における訪問看護の新設加算

介護報酬改定により、訪問看護には以下のような新設加算が設けられます。それぞれの加算の概要を見ていきましょう。

専門管理加算の新設

高度な医療管理を必要とする利用者への訪問看護に対し、専門性の高い看護師が対応した場合に算定できる加算です。該当する利用者には、人工呼吸器管理や気管カニューレ管理、ストーマ管理などを必要とする方が含まれます。専門的なスキルを持った看護師の関与により、質の高いケアの提供が期待されます。

初回加算(Ⅰ)の新設

利用者の自宅への初回訪問時に、訪問看護計画の作成や利用者の状態把握等を丁寧に行った場合に算定可能な加算です。初回訪問では利用者の生活環境や家族の状況等も含めて総合的にアセスメントを行い、適切な計画立案につなげることが重要です。この加算により、初回訪問の重要性が評価されることになりました。

緊急時訪問看護加算(Ⅰ)の新設

利用者の容態急変等によって緊急に訪問看護が必要となった際、医師の指示により、特別な管理を行った場合に算定できる加算です。例えば、喀痰吸引や酸素療法、点滴管理など、通常の訪問看護とは異なる高度な対応が求められるケースが該当します。こうした緊急時の手厚い看護を評価する加算といえるでしょう。

口腔連携強化加算の新設

訪問看護において、歯科医師や歯科衛生士と連携し、口腔ケアに関する助言を受けながら看護を実施した場合に算定可能な加算です。口腔ケアは誤嚥性肺炎の予防など、利用者のQOL維持に大きく関わる重要なケアです。多職種連携を推進し、口腔ケアの質向上を図る狙いがあります。

以上が2024年介護報酬改定で新設される訪問看護の加算の概要です。各加算の単位数や算定要件の詳細については、下記の表でまとめていますので、ぜひ確認してください。

加算名単位数算定要件
専門管理加算250単位/月・特別な管理を必要とする利用者に対して、当該特別な管理に係る専門的な知識と技術を持った看護師が訪問看護を行った場合に算定可能
・緊急時訪問看護加算、特別管理加算との同時算定不可
初回加算(Ⅰ)350単位/月・新規に訪問看護計画を作成し、病院等からの退院・退所当日に訪問看護を実施した場合の加算
・初回の訪問看護時に1回のみ算定可能
・2回目以降の訪問で情報収集した内容を計画に反映させた場合は算定不可
緊急時訪問看護加算(Ⅰ)・訪問看護ステーションの場合
600単位/月
・病院または診療所の場合
325単位/月
・利用者又はその家族等からの緊急の求めに応じて訪問看護を行った場合に算定可能
・医師の指示により、診療時間以外に行う必要がある場合に限る
・1日に1回、月に5回まで算定可能
口腔連携強化加算50単位/回、月1回まで・歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、当該利用者に対する口腔ケアについて助言を行った上で、訪問看護ステーションの看護職員が訪問看護を実施した場合に算定可能
・月1回を限度として算定

次に、2024年の診療報酬改定における訪問看護の新設加算についても見ていきましょう。

2024年診療報酬改定における訪問看護の新設加算

診療報酬改定では、訪問看護のデジタル化推進や看護職員の処遇改善、在宅での看取り支援などに関する新設加算が設けられます。それぞれの加算の詳細を確認していきましょう。

訪問看護医療DX情報活用加算の新設

この加算は、訪問看護の記録や患者情報をデジタル化し、ICTを活用して関係者間で円滑に情報共有を行うことを評価するものです。具体的には、訪問看護記録のデジタル化、クラウドでの情報共有、医師や他の医療機関とのオンラインでの情報連携などが該当します。こうした取り組みにより、ケアの効率化や質の向上、多職種連携の強化などが期待されます。

訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)(Ⅱ)の新設

看護職員の処遇改善は喫緊の課題であり、この評価料は、一定の基準を満たして看護職員のベースアップに取り組む訪問看護事業所を評価するものです。評価料(Ⅱ)は常勤換算2人以上の職員を配置し、一定割合以上のベースアップを実施した場合に算定可能です。看護職員の処遇改善を後押しする加算と言えるでしょう。

遠隔死亡診断補助加算の新設

在宅での看取りを推進するため、訪問看護師がオンラインで死亡診断の補助を行った場合に算定できる加算です。コロナ禍でのオンライン活用の広がりを受け、訪問看護でもオンラインを活用した看取り支援が可能となります。看護師が死亡診断のための情報収集や医師への報告などをオンラインで行うことで、スムーズな看取りが期待できます。ただし、対面での看取りケアの重要性は変わりませんので、あくまで補助的な位置づけとなります。

以上が診療報酬改定における訪問看護の新設加算の概要です。それぞれの加算の点数と詳しい算定要件については、下の表で整理していますので参照してください。

スクロールできます
加算名金額または(点数・単位)算定要件
訪問看護医療DX情報活用加算50円/月・訪問看護記録のデジタル化と、ICTを活用した医師や他職種との情報共有を行った場合に算定可能
・訪問看護計画書及び訪問看護報告書の作成、保管、共有にICTを使用している必要あり
・月1回を限度として算定
訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)780円/月訪問看護管理療養費(月の初日の訪問の場合)を算定している利用者1人につき、訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)として、月1回を限度として算定
訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)2,000点/月・常勤換算5人以上の看護職員を配置
・看護職員の1人当たり月額平均賃金または時給を一定割合以上引き上げ
・賃金引き上げ後の賃金を3ヶ月以上にわたり支払っていること
遠隔死亡診断補助加算150単位/回・利用者の死亡時に、医師が遠隔で死亡診断を行うにあたり、訪問看護ステーションの看護師が補助をした場合に算定可能
・看護師は死亡診断に必要な情報収集や医師への報告を行う
・死亡診断の際に1回算定可能

次に、2024年改定における訪問看護の基本報酬の見直しと、新設される減算についても触れておきましょう。

2024年訪問看護の基本報酬改定と減算新設

2024年の訪問看護の介護報酬・診療報酬改定では、基本報酬が微増となりました。一方で、事業継続計画(BCP)未策定の事業所への減算や、看護職員の訪問回数が一定以下の場合の減算など、新たな減算措置も導入されます。

基本報酬の改定率

介護報酬における訪問看護の基本報酬は、20分未満で1単位、30分未満で1単位、30分以上1時間未満で2単位、1時間以上1.5時間未満で3単位の微増となりました[2][8]。

診療報酬でも同様に、20分未満から1.5時間未満の区分で1~2単位程度の微増改定となっています。

訪問看護の基本報酬は微増ではあるものの、新設加算の取得と合わせることで、一定の収入増加が期待できます。ただし、人件費などのコスト増加分を補えるだけの改定率とは言えないため、経営の効率化も同時に求められるでしょう。

【参考】シルバー産業新聞 ケアニュース 6/1施行【速報】訪問看護 2024年度介護報酬改定単価

業務継続計画(BCP)未策定減算の新設

感染症や災害発生時にサービス提供を継続するための業務継続計画(BCP)の策定が義務付けられ、未策定の場合は以下の減算が適用されます。

  • 訪問看護の場合:所定単位数の1%減算
  • 施設・居住系サービスの場合:所定単位数の3%減算

ただし訪問看護については、2025年3月31日までの間は経過措置として減算は適用されません。

BCPの策定は、利用者の安全とサービスの継続性を確保する上で不可欠です。減算対象とならないためにも、早急なBCPの策定と、それに基づく体制整備が求められます。BCPの策定・運用には一定の労力を要しますが、将来のリスクに備える重要な投資と捉えるべきでしょう。

【参考】カイポケ訪問看護マガジン 【2024年度介護報酬改定】BCP未策定事業所へ減算を検討。訪問看護は令和8年度末まで対象外

看護職員の訪問回数に応じた減算の新設

理学療法士等のリハビリ職による訪問看護の割合が高いステーションに対し、看護職員の訪問回数が一定以下の場合に減算が適用されます。

直近3ヶ月の看護職員の訪問回数が、リハビリ職の訪問回数を下回る場合に、以下の減算となります。

  • 訪問回数加算を算定している場合:8単位/回減算
  • 訪問回数加算を算定していない場合:12単位/回減算

2024年の訪問看護は、基本報酬の微増改定となる一方、BCP未策定減算や看護職員訪問回数減算など新たな減算措置も設けられました。各事業所は報酬改定の内容を十分に理解し、減算対象とならないよう適切な体制整備を進めていくことが求められます。

【参考】井ノ上剛(ごう)の福祉起業塾 【リハ職による訪問看護時の減算】令和6年度訪問看護報酬改定

以上のように、2024年の訪問看護は、基本報酬の微増改定となる一方、BCP未策定減算や看護職員訪問回数減算など新たな減算措置も設けられました。各事業所は報酬改定の内容を十分に理解し、減算対象とならないよう適切な体制整備を進めていくことが求められます。 では次に、今回の報酬改定が訪問看護事業所の経営にどのような影響を与えるのか、詳しく見ていきましょう。

訪問看護の2024年報酬改定で経営に与える影響

新設加算を積極的に取得することで、訪問看護事業所の収入増加が見込めます。例えば、専門管理加算や口腔連携強化加算などを算定することで、1件あたりの訪問看護収入を増やすことができるでしょう。ただし、加算取得のために必要な体制整備には一定のコストもかかります。専門性の高い看護師の確保や、歯科医師・歯科衛生士との連携体制の構築など、追加の人件費や事務コストが発生します。

一方、減算対策も経営上重要な課題です。業務継続計画(BCP)未策定減算や、看護職員の訪問回数減算などを避けるため、BCPの早期策定や看護職員の適正配置などが求められます。減算発生は収入減だけでなく、事業所の信頼にも関わる問題であり、確実な対策が必要不可欠です。

訪問看護事業所は、今回の報酬改定による収入増加の可能性と、コスト増加や減算リスクを総合的に勘案し、経営戦略を立てる必要があります。加算取得による収入増加分が、体制整備コストを上回るシミュレーションを行い、優先的に対応すべき加算を選定するとよいでしょう。また、加算取得後の利用者増加を見込んだ中長期的な収支予測も重要です。

減算対策についても、単なるコスト要因としてではなく、事業の継続性や質の向上に不可欠な投資と位置付けるべきです。利用者の安全確保とサービス提供体制の維持は、訪問看護事業所の存在意義に関わる大前提だからです。

今回の報酬改定は、訪問看護の質の向上と事業運営の適正化を促す内容と言えます。訪問看護事業所は、報酬改定の趣旨を理解し、自事業所の体制を見直すとともに、中長期的な経営戦略を再構築することが求められているのです。

加算の取得と減算の回避、そしてそれらを支える体制づくりに計画的に取り組むことで、今回の報酬改定を事業の発展につなげていくことが重要でしょう。では次に、事業所が具体的にどのような対応を進めるべきか、ポイントを整理していきましょう。

訪問看護事業所の2024年報酬改定への対応策

報酬改定を踏まえ、訪問看護事業所が取り組むべき対応策については以下のようなポイントが挙げられます。

まず、新設加算の算定要件を再確認し、自事業所の体制を見直すことが重要です。例えば、専門管理加算の算定には、高度な医療管理を必要とする利用者への対応力が求められます。対象利用者の受入れ体制や、専門性の高い看護師の確保・育成などについて、具体的な計画を立てましょう。

また、口腔連携強化加算の算定には、歯科医師や歯科衛生士との連携体制の構築が不可欠です。連携先の選定や、情報共有の方法、スタッフ教育などを早期に進めておく必要があります。

加算算定には、スタッフ全員の理解と協力が欠かせません。管理者は報酬改定の内容を丁寧に説明し、スタッフの意見を聞きながら、体制整備を進めていくことが大切です。加算取得に向けた目標と計画を共有し、スタッフのモチベーションを高めることも重要なポイントと言えるでしょう。

一方、減算対策も看過できません。特にBCP未策定減算への対応は喫緊の課題です。BCPの策定に当たっては、地域の災害リスクや事業所の特性を踏まえ、実効性の高い計画とすることが求められます。感染症対策も盛り込んだ内容とし、定期的な見直しも忘れずに行いましょう。

看護職員の訪問回数減算への対応も重要です。利用者のニーズに合わせ、看護職員とリハビリ職のバランスの取れた訪問計画を立案することが基本です。看護職員の適正配置やスキルアップ、業務効率化などにも計画的に取り組み、減算リスクを最小限に抑えましょう。

他事業所の動向にも目を配っておくことも大切です。地域の訪問看護事業所の加算取得状況や体制整備の進み具合を把握することで、自事業所の対応の参考とすることができます。さらに、加算取得後の利用者の反応や、業務効率化の工夫など、他事業所の好事例を学ぶことも有益でしょう。事業所間の情報交換の場を活用することをおすすめします。

これらの対応を進めるためには、管理者のリーダーシップのもと、全スタッフが報酬改定の内容を理解し、意識を共有することが何より大切です。事業所全体で、報酬改定を前向きに捉え、事業の発展につなげていく姿勢を持つことが求められるでしょう。

そして経営面での対応とともに、常に利用者本位のサービス提供を追求し、地域における訪問看護の役割を果たしていくことが、事業所の持続的発展につながるのです。

今回の報酬改定をチャンスと捉え、事業のさらなる飛躍を目指していきましょう。

まとめ

2024年の訪問看護は、加算新設や算定要件の変更など、大きな報酬改定が予定されています。事業所にとっては、加算取得によるサービスの質の向上と収入増加のチャンスである一方、体制整備に伴うコスト増加や、減算リスクへの対応も求められます。

新設加算の内容とそのポイントを正確に理解し、自事業所の現状を踏まえた体制整備を計画的に進めていくことが重要です。専門性の高い看護師の確保・育成、他職種との連携強化、スタッフ教育など、ハード・ソフト両面での対応が必要となるでしょう。

また、減算対策については、早期の取り組みが欠かせません。特にBCP策定は、利用者の安全とサービスの継続性を担保する上で不可欠な要素です。看護職員の訪問回数減算についても、適切な人員配置と訪問計画の立案により、減算リスクを最小限に抑えることが可能です。

報酬改定への対応は、事業所の経営戦略の根幹に関わる重要な経営判断です。単なる制度への対応ではなく、自事業所の強みを活かし、地域のニーズに応えるサービスを展開していくための契機と捉えることが大切です。

訪問看護は、地域包括ケアシステムの中で今後ますます重要な役割を担うことが期待されています。2024年の報酬改定を、さらなる飛躍のチャンスと捉え、前向きに取り組んでいきましょう。事業所の理念に基づき、利用者本位のサービス提供を追求することこそが、持続的な発展につながるのです。

制度の変化に柔軟に対応し、地域から信頼され選ばれる訪問看護事業所を目指して、スタッフ一丸となって邁進していきましょう。

以上が診療報酬改定における訪問看護の新設加算の概要です。それぞれの加算の点数と詳しい算定要件については、下の表で整理していますので参照してください。

訪問看護の新設加算一覧

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